脇田研の研究テーマの一つは、目の前にありながらも知覚することができない自然界の情報を可視化/可聴化/物質化することで、世界の見方を新しくするメディアを作り出すことです。作業の中心になるのはプログラミングやコーディングと呼はれる行為であり、ソースコードに思考のエッセンスを見出します。現代の高速なコンピュータと数学を駆使することで、人間の知覚能力はより繊細に拡張できるはずです。脇田研では、空気、音波、熱などこの世界に満ちている様々な流れの生態系を知覚できるメディアを開発していきます。
コンピュータ全盛の現代は、ビックデータやAIによる「見える化」が進んでいるようで、実は「不可視化」が進んでいる時代なのかもしれません。多くの人は自らの手で直接データに触れることはなく、代わりに扇動的な見出しとフェイクニュースが横行するマスメディアから世界を捉えようとしているようにみえます。かつての縄文人は、生きるか死ぬか、狩るか狩られるかというのっぴきならない状況で、全身全霊で森を駆け抜け、獲物と向き合う激烈な日常を過ごしていたといいます。現代人もデータの森を駆け抜け、全身全霊で真実を捉えようとする身体を獲得すべきではないでしょうか(岡本太郎はそのような縄文人の感覚を四次元的世界と名づけ、『縄文土器論』で彼らが見ていた世界と土器造形の関係を紐解こうとしました)。
早くも21世紀の4分の1が経過しました。21世紀の現代だからこそ実現しうるアートとはどのようなものなのでしょうか?300年後に語られる2025年当時のアートとはどのようなものになるのでしょうか?慶應義塾大学SFC脇田研究室では次代のアートを切り開く新しいアーティスト/キュレーター/プロデューサーを育成していきます。